「脱社畜の働き方」を読みました
皆さんもご存知、はてなブログの気鋭「脱社畜ブログ」を書かれていますid:dennou_kurageさんの著書「脱社畜の働き方」が本日発売されました!(パチパチパチ)
- 作者: 日野瑛太郎
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2013/09/07
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
・・・で、早速先ほど読み終わりました(笑)
正直発売日に読破することはあまりないので、私自身びっくりしています(^_^;)
このスピード読破は、私がクラゲさんのファンということで他のことを差し置いて優先して読みにいったということもあるでしょうけれど、やはりまずは文体がブログと同じく非常に読みやすく、そして何より内容が面白かったことが大きいと思います。
ええ、非常に楽しく、時に驚かされ、そして考えさせられる充実した時間でした。
中身が短かったり内容が薄かったりという心配はありません。むしろ、ボリュームとしては思った以上にありましたし、非常に濃ゆい話も色々出てきます。
ということで、今日は、この「脱社畜の働き方」の感想を僭越ながら書いてみようと思いますー。
「ブログ」から「本」へ
本書の内容は、クラゲさんのブログと同じく「脱社畜」というキーワードを冠していることからもお分かりの通り、「働き方」というブログと同じテーマになります。
上でも書きました通り、文体はいつもブログで読ませていただいている通りの、読みやすく分かりやすいのにそれでいて説得力を落とさないあのスタイルで、「本」だからといって堅く構える必要はなくスムーズに読み進めることができます。
クラゲさんのブログが好きな方は、自然に本の方にも入り込むことができるでしょう。
しかし逆に、ブログとテーマやスタイルが同じ、と言われると、結局「それならブログを読めばいいじゃん」とか、「ブログ記事の使い回しじゃないの?」とか、新鮮味の無さを敬遠する方もいるかもしれません。
確かに、実際「あ、ここはブログで読んだことあるかな」と、ブログで既出の部分はいくらかありました。
ですが、ブログではあまり語られてない「クラゲさんが脱社畜を考えるに至った経緯」が丸々一章をかけてじっくり綴られていたり、「脱社畜しろと言ってもどうしたらいいんだ」という声に答えるために「プライベートプロジェクトのやり方」についても、これまた丸々一章をかけてコレでもかと丁寧かつ具体的な指南や解説がなされています。
(私がブログで読み飛ばしてなければ)この辺りはほぼ完全に書きおろしで、そして非常に興味深く、ボリュームもあって読み応えのある部分でした。
クラゲさんの意外な過去(ほんとビックリしました!)も明らかになるので必見ですし、今後前向きに「脱社畜」を検討されている方にも、丁寧なプロジェクトの解説はいい道標となることでしょう。
少なくともクラゲさんのブログが好きな方であれば、「使い回し」を心配される必要は全く無いかなと思います。
そして、「ブログで読んだことがある項」であってもまた、「本」で読むと印象が違うものです。
私も弱小ながらブロガーの端くれ。ブログを書いていて常々思うことは、自分が考えていることが「ちょっとずつしか出せない」というもどかしさです。
ブログで書ける記事は、いくら長く書くといっても限界があります。長すぎると読んでられないですし、書く方としても趣味として隙間時間に書くとなると現実的にあまり長くも書けません。
皆さんもご存知の通り、私のブログはよっぽど長文志向ですけれど、実のところこれでも「考えていることの全体像」に比べれば到底「短い」んです。
「全体をザーッと表したい」、そういうもどかしさをいつも感じつつも、やっぱり現実的には、考えていることをちょっとずつ出すわけです。
一つの解決策として、一つのテーマを分割して書いてシリーズ化して公開することがありますが、これもやっぱり記事と記事の間の日数が空いてしまって読者の方も「前回どんなだったっけ」と思い出すのに苦労をかけますし、新規に訪れてくれた人はTOPにある記事が「続き」だと、多くの場合「さかのぼるの面倒くさいな」と思ってすぐに帰ってしまうことでしょう。
書く側としても、シリーズを書いている間にも、何か面白い時事ネタがあったりすれば、それに対するタイムリーな記事を書きたくなることがあり、ついつい浮気してしまうこともあります(同じテーマを書き続けるのもしんどいですしね)。
しかし、それも「シリーズの連続性」が失われる一因にもなってしまいます。
やっぱりブログというのは、記事が堆積していく「ストック」の面も確かにあるものの、「今書かれた記事」「今読みたい記事」といった「リアルタイム性」や「フロー」の側面も強いものと感じます。
すると、一回一回で、それなりのところで「オチ」をつけると言いますか、記事として完結しないといけないところがあるわけです。
クラゲさんは、そのあたりが非常に上手くて、(私と違って)読みやすい長さのブログ記事の中にしっかりした内容が凝縮されています。これが押しも押されぬ人気ブロガーとなった一因でもあるでしょう。
ただ、そんなクラゲさんをもってしても、短い文章の中では、説明しきれないところや、過去に書いた話とのつながりが切れやすいところがあるようで、その情報不足による誤解の結果、理不尽な批判を受けて「追記」や「弁明記事」で釈明に追われている姿を、時々お見かけしました。
その丁寧な対応の中に、
「そうは言ってないのに・・・」「そこは前の記事で書いたんだけど・・・」
そんなもどかしさが、見えるようでした。
残念ですけど、これは「ブログ」という媒体の宿命なのでしょう。
でも、今回は「本」なんです。
いつもは断片、断片で見ていた記事が、本になることで、連続性を持った一つの流れとして捉えることができるようになります。
「点と点が線としてつながる」あるいは「音符がメロディーになる」、そう言ってもいいかもしれません。
「記事」と「記事」がつながって「章」となり、「章」と「章」がつながって「本」となることで、「クラゲさん」という一人の人間の考える「働き方」というものが、今まで以上に鮮やかに伝わってきます。
そう、だから、ブログと同じ記事であっても、本の中の流れに一体となることで、非常に自然に、そしてしっかりと入ってくるのです。
一度読んだ記事だとしても、新たな感触を与えてくれるのです。
それにしても、「ブログのもどかしさ」を越えて、自分の考えを「本」というまとまった形で提供できる喜び、それはいかほどでしょうか。
そのチャンスを受けて、クラゲさんは本当にしっかりと全体の流れを紡がれていますし、今まで見せてなかった部分をも出してきている、そう感じます。
最近になって本名を明らかにされたのも、そのような「出す覚悟」の現れなのかもしれません。
だから、大丈夫です。
クラゲさんは本気です。
クラゲさんの「脱社畜ブログ」という「ブログ」が好きなら、「脱社畜の働き方」という「本」は、よりあなたに深い体験をさせてくれます。
よりクラゲさんという人間に近づくことができます。
実際、私はクラゲさんと「労働観」はおそらくかなり似ていて、結論的なところはほぼ同じと言ってもいいのですが、今回この本を読ませていただいて初めて、同じ結論に至るにしてもその思うに至った過程や背景がけっこう違うことを知りました。
違うということは悪い意味ではありません。
同じ定理を証明するにも、証明方法が色々あるように、「人の考え方」というものの多様性や深みを感じられて、非常に面白いです。そして、違う過程の中から同じ結論が導かれたことが、より一層その「結論」に対する思いを強くできたのです。
だから、クラゲさんという人間やその考え方に興味があるなら、たとえ「ブログ」を読んでいたとしても、この「本」を敬遠する必要は全くありません。
むしろ「ブログ」を読んでいる方が「本」も楽しめるかも、そのようにも思えます。
脱社畜の思考法
ええと、はい、ちょっと脱線した気がしてきました(^_^;)
気を取り直して、具体的な本書の内容に戻ります・・・。
内部の構成としては、第1章と第2章の各項で、最後に「社畜の思考法」と「脱社畜の思考法」を並べて提示するという独特の試みがあって、これが良い意味で非常に身も蓋もないのですごく面白いです(笑)
特に「『社会人』を『社畜』に置き換えて聞くと良い」という思考法は、可笑しすぎて吹いてしまいました。。。
そんな飽きさせない工夫がありつつも、内容ももちろん非常にしっかりされています。「サービス残業は犯罪」とか「有給休暇は全部取るもの」など、ウンウンとうなずけることばかりです。
これらって「当たり前」のことなんですよね。少なくとも法律の範囲では全くもって「当たり前」なんです。
ただ、クラゲさんが本書でも書かれていた通り、このような「当たり前のこと」が「当たり前」として発言できずに、みんな心の中で押しとどめてしまっている、そんな現状があるからこそクラゲさんがこのようにちゃんと言わないといけないのでしょう。
でも、こういうことを言うと来やすいのが「仕事をしっかりやる人間を否定している」といった批判です。
ただ、これは、ブログや本書の中でクラゲさんが何度も強調されている通り、誤解です。
クラゲさんは「仕事を好きになるな」「仕事を真面目にやるな」「やりがいを持って働いてはいけない」などと言われているわけではありません。
そうではなくて「仕事を好きになることを他人に強要するな」と言っているのです。「仕事を好き」なのも「仕事は嫌い」なのも、人それぞれなんです。
「キクラゲが好き」か「キクラゲが嫌い」か、その程度の個人差でしかありません。
「仕事が好きでしっかり働くこと」は素晴らしいことです。
でも、それと同じく「仕事以外のことに没頭すること」も素晴らしいことです。
だからこそ、「『素晴らしいことだから』といって他人にそれを強要することは素晴らしくないこと」です。
大事なのは自分が仕事を「好き」か「嫌い」か、つまり自分の気持ちと向き合ったかどうか、他人に強要されて無理に好きになろうとしてしまっていないか、そこを見つめ直すことなんだと思います。
「仕事」は「仕える事」と書きます。きっと「他人に仕える」そういう意味があるのでしょう。でもそれでは「仕事」は「他人のもの」のままです。
そんな「仕事」をちゃんと「私事」――「私の事」――として「自分のもの」にできるかどうか、そんなことをクラゲさんは問いかけます。
起業の経験や、プライベートプロジェクトのチャレンジなどを通じて、クラゲさんはまさに仕事を「自分のもの」にしようとされています。その流れを本書を読めば追体験することができるのですが、その姿を感じることで、自然に私たちは「自分は仕事とどう向き合っているだろうか」考えさせられることでしょう。
34個も「脱社畜の思考法」が載っている本書ですが、最も大事なのは、多分この「仕事を自分のものにできているか考えること」なのだろうと思います。
もし、「仕事を自分のものにしたい」と思っているのであれば、本書はその助けになるでしょう。
もし、「仕事は当然素晴らしいものだ」と思っているのであっても、「素晴らしいものだからこそ一度考えてみるため」に本書はすごくいいきっかけとなると思います。本書を読んだあとも自然に「仕事は素晴らしいものだ」と思われるのであれば、それはきっと十分「社畜」ではなく「社会人」になっている、つまり「脱社畜」できているのです。
仕事を好きな人にも、嫌いな人にも。
考えるきっかけをくれる。
そんな本です。
はい、ちょっとグダグダでしたが(というか半分ぐらいは本に関係ない私の話だったような・・・)、そんなこんなでとにかくオススメです!
ちょっとでも興味のある方はぜひ(・∀・)
- 作者: 日野瑛太郎
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2013/09/07
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
⇧再掲
P.S.
ええと、そんな感じで感想でした。
ファンを公言しすぎてるので、オススメしても説得力無いかもしれませんが、それでもいいです、しょうがないですし(^_^;)
以下、筆者か読んだ人にしかわからないかもしれない細かい一言コメントを適当に並べます。
・有給休暇に業務調整要るの?
クラゲさんは有給休暇取得に「業務調整をしていればOK」って言ってらっしゃるんですが、私はもっと過激派なので「業務調整もしなくていい」とさえ思ってたりします。もちろん余裕をもって前もって申告するのが前提ですが、その有給休暇取得願いを受けた管理職が業務調整するべきだと思ってるので。
「同僚間の自主的な業務調整の必要性」というのもやっぱり「休暇を取りにくい空気」の原因でもあるかなーと。
・いい本なんですが。
いい本なんですけど、惜しむらくは、すでにある程度「精神的脱社畜」できてる人は手に取るでしょうけれど、本当に心底「社畜」な方々はその性格上なかなか読んでくれないかもって、心配です。
こればかりは地道に主張し続けるしかないのでしょうかねぇ。。。
・苦行を美とする日本社会
苦労を美徳とすると言われる日本社会。私がいつも不思議なのは、仏教の開祖であるブッダも若き日に「苦行なんて意味ない」って「苦行」を否定してることで。
ブッダはむしろそういう「苦労しないといけない」などの「こだわり」こそが苦悩の源って説かれてるんですよね。
こんなに仏教が広まってる日本なのに、なぜか「苦行崇拝」も広まっているので、私は不思議でなりません。
・入社した途端に手のひら返し
会社は「社員は家族だー」という親近感から、かえって社員に「当然やってくれるよね?」と半強制するブラック思考になるというお話。
ほんと私は「親しき仲にこそ礼儀あり」と思ってるタチなので、この雰囲気が嫌でしょうがないです。ちゃんと対等な立場として相手を丁寧に扱って欲しいです。
・プログラミング
本書を読んでると、楽しそうですごくやってみたくなりました。
以前から、ちょっと興味はあったのですが。
できるかなー?
以上でーす。