眠らない街 ~24時間戦えますか~
コンビニエンスストアってその名の通り便利です。
だいたい欲しいものが調度良い分量でそろってますし、お金を下ろしたり何なりと各種サービスも受けられます。
そして、何と言ってもその営業時間です。24時間365日、いつでも開いています。いつ行っても閉まっていることがない、この便利さは相当なものです。
おかげで、私たちは、仕事で遅くなった帰りに何か必要なものができても、たいていの場合、急場を凌ぐことができるのです。
それにひきかえ、銀行や役所はなんでしょう。
平日の日中しか空いていません。
銀行にいたっては15時までだったりもします。
そんなの独り身社会人からすれば、魔の時間帯です。残業時間帯どころか日中です。抜けられるはずがないじゃないですか。
各種手続きしたくてもどうしろと言うのでしょう。
実際、どうしても急用で銀行や役所に行かないといけない時は本当に困ります。無理を行って職場から駆け出して、大急ぎで用を済ませるのが常です。あの間の気まずさと言ったらありません。
ほんとうにほんとうに不便です。
少しはコンビニエンスストアを見習って欲しいです。
◆
・・・と。
コンビニエンスストアは便利で、お役所は不便。
私だけでなく何となく普段皆さんも思っていることではないでしょうか。
そんなニーズを受けてか、それぞれ最近では時間外に対応するサービスも増えてきているようです。
ですから、私たちの願い通り「便利化」は進もうとしていると言えるでしょう。
一方、依然として世界や地方にはコンビニエンスストアなんて無くて、日中でお店が閉まってしまう地域は多くあります。下手をするとコンビニエンスストアなのに24時間営業じゃなくて夜間閉まってしまうところもあるのです。
私も空いてるはずと思っていたコンビニエンスストアが夜には閉まっていて、困ったという経験がありました。
ここで考えてみて下さい。
こういう地域は本当に「不便」なのでしょうか。
こういう地域でも年中無休営業を進めて便利にするべきでしょうか?
では、試しにその地域の人に意見を聞いてみましょう――
私「すみませ~ん。ここらへんはお店が早く閉まって不便ですよね?世の中には24時間365日空いてるコンビニエンスストアというものがあるんです。便利でしょう。この地域にもどうですか?」
人「いんや、要らんなぁ」
私「どうしてですか?夜遅くなった時なんかいつでも買えて便利ですよ~?」
人「そう言われても、遅くならないからのぅ。欲しいものは日中に買いにいけばええ。そもそもそのお店の店員さんはいつ寝てるのかえ。」
私「そりゃ、日中に寝て夜に出てきて朝まで働いてたり・・・」
人「大変じゃのう。そんな不健康な生活どうしてせんといかんのかのぅ。みんなが日中に買えばええだけじゃと思うがのぅ。どうしてみんな日中に買いにいかなんだ。」
私「そりゃ、日中は仕事があって、仕事が終わってからじゃないと行けないものですから・・・。」
人「つーことは、なんじゃ。自分の仕事が遅うなったから、その分、人にはもっと遅くまで働いてもらわないといけんゆーこっちゃか?それにしたって人様をお天道様に会わせられないほど働かせるちゅーのはどうなんじゃろ。早く仕事終いにするか、せめて途中でも日中に買い物に行ったらいいんじゃないかのうー。」
私「それがなかなか仕事終われないし抜けられないんですよ・・・」
人「なんでじゃ」
私「そう言われると・・・何でなんでしょうね・・・」
◆
・・・と。
つまり、こういう地域では「遅くじゃないと買いにいけない人」がいないので、コンビニエンスストアの必要がないわけです。
そして、逆に言えば、コンビニエンスストアが必要な地域というのは「遅くじゃないと買いにいけない人」が多いということになります。
式にすると、
「仕事が遅くなる⇨日中買い物行けない⇨コンビニエンスストアの登場」
ですね。
ですが、ここでは止まりません。ここで恐ろしい化学反応が発生してしまうのです。
「仕事が遅くなる ⇨ 日中買い物行けない
⇧ ⇩
仕事遅くてもよい⇦ コンビニエンスストアの登場」
便利になった分、遅くなってもなんとななった分、仕事が遅くても大丈夫になってしまったのです。仕事を早く切り上げないといけない理由が弱くなってしまったのです。
これは図で表した通り、完全な悪循環で、次から正確にはこうなります。
「仕事が遅くなる ⇨ もっと遅くないと買い物行けない
⇧ ⇩
仕事遅くてもよい⇦ コンビニ営業時間の延長 」
恐ろしいことですが、こうやって仕事はどんどんどんどん遅くなっていっているのです。
これはコンビニだけには限りません。
電車の終電の遅さ、始発の早さ、その他「忙しいあなたのため」というようなサービスは何でもかんでもです。
そして同時に、コンビニ店員や電車の駅員さんなどは、当然遅くまで仕事をしなくてはいけなくなっていきます。
誰かが仕事が遅くなったせいで、他の人も仕事が遅くなっていくのです。
そしてさらに恐ろしい思考も登場します。
「自分が遅くまで働いているのだから、他の人も遅くまで働いて当然」
こう考える人も出てくるのです。
だから、宅配便の人に
「深夜まで運べ」とか、「時間指定をもっと細かくできるようにしろ」とか、そういう無理難題を平気で要求している人達までいる
のです。
この状況どうなんでしょうか。
この「時間外労働」が「時間外労働」に連鎖する現象どうなんでしょうか。
そのループが果てしなく回っている現状ってどうなんでしょうか。
私はおかしいと思います。
だって、人間はそんなに果てしなく回れないからです。
そんなことをしたら待っているのは・・・死なんです。
深夜にもかかわらず煌々と輝いているコンビニエンスストアの灯りを見ていると、私には、まるでみんなが「便利」というハーメルンの笛に踊らされて、死の淵まで行進しているネズミのように思えるのです。
◆
セブンイレブン。
名前を見て下さい。ご存知の通りもともとは7時~11時の営業だったのです。それで十分便利だったはずなんです。
それがなぜ24時間になっているのでしょう。なぜ、そんなに伸びてしまっているんでしょう?
変わるべきは銀行や役所でしょうか。
彼らがもっと働くべきなのでしょうか。
いつでもいけるように「便利」になるべきでしょうか?
そうではないですよね?
みんなが日中に銀行にぐらいいけるような、そんな社会が普通なんです。
まず変わるべきはコンビニエンスストア化している私たちの方なんです。
◆
コンビニエンスストアが登場して、街は「眠らない街」となっています。
ですが、本来単なる概念である「街」が眠ったり眠らなかったりするわけではありません。
「街」というものが「人」の集まりである以上、主体になってるのはそれはやっぱり「人」なんです。
「眠らない街」は「人が眠らない街」なのです。
そしてともすればそれは「人が眠れない街」なのです。
どうでしょう。
「みんながぐっすり眠れる街」
私はその方がいいんじゃないかなと思うんです。
だって、24時間なんて、私は戦えないもん。

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P.S.
id:dennou_kurageさんのこの記事に捧げます。