雪見、月見、花見。

ぼーっと考えたことを書いています。

情けなく恐ろしい公務員早期退職者問題

 あちこちで話題になっています、公務員退職金引き下げに伴う早期退職ラッシュの問題。

警察官も教師も“金の切れ目が…” 退職金減額前「駆け込み辞職願」乱発(1/2ページ) - MSN産経west

 

そういう早期退職する態度に「誇りはないのか」と怒る方々もいれば、

教員の駆け込み退職調査 下村文科相「許されぬ」と不快感 - MSN産経ニュース

 

片山さつき Official Blog : 退職金が民間より15%(平均400万円)高いとの調査により、引き下げが決まり、生徒と職場を放り出して駆込み退職した地方教員、警察の方々!公務の矜持は何処へ?

 

その早期退職者を責める風潮に逆に怒る方々もいて、

経済合理的に行動することが、なぜ批難されなければならないのか - 脱社畜ブログ

 

無責任なのは誰か - novtan別館

 

そして、両者のジレンマの中で悩む方々も。

先生は聖職者? - 八祐会 ブログ

 

退職金とヘリコプター - だるろぐ

 

 この問題は私と公の関係はどうあるべきか、私たちが目指す価値観とは何なのかを一人一人の心それぞれに問いかける非常に示唆に富んだ問題です。

是非みんなにじっくり考えて欲しいテーマです。

※こういう問題を提示してくれたという意味では、ある意味、退職した先生方にとっては最後かつ最大の授業とも言えるかもしれませんね・・・。

 

 

 ◆

 

では、そういう私がどう思っているのかというところですけれど。

 

一言で言えば、私はこんなに情けない話はないと思っています。

その程度の退職金の差額のためにこんなに多くの人が早期退職するなんて、本当に情けない話です。

 

・・・あ、誤解しないでいただきたいのですが、この「情けない」の対象は、早期退職した方々のことではなく、そんな早期退職を彼らに決意させてしまった私たちのことです。

早期退職者は彼らの自由を行使しただけで、全く悪くありません。

 

そう、早期退職者の方々に「誇りはないのか」と責める方々がいらっしゃいますが、責めるなら私たち社会の側だと思うんです。

 

私たちが、彼らにそんな額で誇りを捨てるほど公務に対してやりがいを感じさせられていなかったことこそが、責められるべき、反省すべき点なんです。

 

 

いいですか。

 

誇りは彼らが自分たちで勝手に感じるものではありません。

 

彼らに私たちが与えるものです。

 

 

だから、今回のように彼らの誇りが無くなってしまったならば、責められるべきは彼らではなく私たちの方なのです。

 

やるべきこと、大事にすべきことを、私たちが怠り、忘れてしまったから、こんな情けないことになるのです。

 

以前も実はこのテーマで一節書いているので、ここではあまり多くは語りません。

 

お時間がある方は、どうぞ⇩

その「道徳」が社会を壊す - 雪見、月見、花見。

特に下の方の「本当の道徳的社会になるために」の章などご覧下さい

 

結局は、私たちが彼らのような「道徳的な仕事」に対して「報酬」あるいは「名誉」という対価を十分に与えられていなかったことが問題なんです。

今回は特に彼らの「報酬」を下げたというお話ですから、すなわちその分に耐えうるだけの「名誉」を彼らに私たちが与えられていなかった、ただそれだけのことなのです。

 

これは、他でもなく、だれでもなく、私たちの責任です。

 

今回の話は社会全体で「道徳的な仕事」の価値を貶めていることが明らかになったという事件なんです。

 

ほんとうに、こんなに情けない話はないのです。

 

 ◆

 

さて、この問題が、私たちみんな、つまり社会全体の責任ではあるとはいえ、さすがに特によろしくないと思うのが、冒頭でも挙げた「誇りを盾に退職者を責める方々」のお二人です。

 

彼らは教育のトップである「文部科学相」であったり、良識の府の一員である「参議院議員」でありながら、「誇りが無いことを退職者たちのせい」にしているからです。

 

私はこんなに恐ろしいことは無いと思います。

 

 

・・・恐ろしいですよね?

 

え、ピンと来ないです?

 

うーん。

 

では、なぜこれが恐ろしいのか、ちょっと、見ていきましょう。

 

今回の件では、退職金が割に合うか合わないかという経済合理性の部分がクローズアップされがちなのですが、そういうところはあえて抜きに問題点をシンプルにします(そのあたりは色んな方がもう主張されているところですし)。

 

順にポイントを押さえていきます。

 

まず、1つ目は、今回退職した人たちは何の法律違反もしていないということです。

私は法律に明るくはないのですが、自主退職が犯罪になるなんてことは考えにくいですし、もし犯罪であれば、主にその点で責められるでしょうから、そんなことはないのでしょう。

 

2つ目は、「公務員であればここで退職しないのが当然」というのは単なる好みの1つということです。

そう思う人がどんなに多数派であったとしても、単なる一意見でしかありません。何の権利もありません。たとえ目玉焼きに醤油をかける派がどんなに多かったとしても、それで塩をかける派やケチャップをかける派よりも偉いわけではないのと同じです。

 

3つ目は、「このお二人」はあくまで公職たる政治家としての立場から「退職者は許せない」と発言しているということです。

文科相は記者会見で、参議院議員は議員であることを明記された自身の公式ブログでの主張で、どちらもその肩書きを背負いながら発言しています。

ですから、あくまで個人的な意見ではなくて、公的な立場からの発言ということになります。

 

 

で、この3点を踏まえますと、結局のところ、彼らの発言は、大臣や議員など、公的権力を持った方々が、法律に基づかない自分の好みを国民に押し付けているということになります。

これはすなわち、中央権力が人々の自由を侵害していることに他なりません。

 

憲法の精神にも逆行する行為で、私はこんなに恐ろしいことは無いと思います。

 

そして、これがあまりにも当たり前のように通っていることが、さらに恐ろしいです。

 

果たして、彼らは彼らの発言の意味を自覚されているのでしょうか・・・?

自覚していても、自覚していなくても、どちらもやっぱり恐ろしいことなのですが・・・。

 

 ◆

 

公務員に早期退職者がたくさん出たことはもちろん恐ろしいことです。

ですが、その早期退職者に対し「誇りを持て」と発言する政治家が居るということがもっと恐ろしいです。

そして、これが別に「失言」にもならず、当たり前のように通っていることが、さらにさらに恐ろしいです。

 

しかし、そんな政治家たちを選んだのも元はと言えば、私たち国民です。

 

だから、これもまた、非常に情けない話だなと思います。

 

 

さあ、みんなで反省しましょう。。。

 

 

 

 

 

P.S.

みんなが「自由」が嫌いならいいんです。

私は「自由」が好きで大事に思っていますが、それもあくまで私の好みでしかありませんから。

でも、本当にいいんでしょうか?

みんな「自由」は嫌いなんでしょうか?

そうでないなら、こんなことが静かに通っていることは、やっぱりすごく恐ろしいことだと思います。