正しいカメラの買い方
以前、カメラを買おうと家電量販店に行った時のことです。
素人のくせして、夜景が綺麗に撮れるカメラないかなあと探していたんです。
どうやらF値が低いとレンズが明るい、すなわち夜景が綺麗とゆうことらしいという情報をゲットしまして、「F値が低いカメラはどれが良いでしょうか」とスタッフの方に説明を聞いてみました。
色々説明を聞く中で、私がついついそのF値の低さにばかりこだわってしまったのでしょう。
そのスタッフさんはこんなことを言いました。
「うーん、最近は、F値や画素数などの数字ばかり気にされて、実際にどう撮れるかを気にしない方が多いんですよね。」
と。
写真写りなんて他の要素で容易に変わってしまうのに、下手をすると試し撮りや、サンプル写真の閲覧もしないまま、数字の優劣だけで買われる人もいるとのことで。
あくまで優しい口調で、嫌味は感じませんでした。むしろ、その内容にハッとさせられて、反省するばかりでした。確かにちゃんと操作してみたり、サンプル写真を比較したりしてなかったことに、その時ようやく気づかされたんです。
恥ずかしくて穴に入りたくなりました。
◆
前回話題にしたレビューサイトの点数のように、カタログの数値は商品を判断することにおいて、非常に便利な存在です。客観的で定量化された指標なので、どちらが良いか悪いか簡単に比較できます。
ただ、これらの数字を使うことには落とし穴があるんです。
そもそも、買い物の目的は、そのような点数が高いものを選ぶことでしょうか?
そうではなくて、自分が良いと思うものを選ぶことだったはずです。
例えばカメラであれば、F値が低いかどうかではなくて、夜景で実際に綺麗に写真が撮れるのかどうかが大事なはずなんです(さっきの場合、私のような素人でもという条件も付きます・・・)。
点数がいくら高くても自分にとって良いと思えるものでなければ意味はないはずなんです。
そして、良いモノを選ぶために、あくまで参考として点数を見ていたはずなんです。点数で見るのと同時に、自分の感覚でも良いかどうか評価しないと選べないはずなんです。
でも、いつしかこれは逆転してしまいます。
「点数が高いから良いモノのはず」
こうなってしまうんです。
データだけみて、自分の感覚での評価を省略してしまうんです。
先ほどのF値にこだわり続けた私のような状況です。
これは私だけでなくて、きっと皆さんも実感されたことあるはずです。
この症状が進めば、先ほどからの、
「レビューの点数がいいから良いモノのはず」
「F値が低いから良いモノのはず」
だけでなく、終いには
「価格が高いから良いモノのはず」
「学歴が高いから優秀な人材のはず」
などにも発展して、ますますおかしいことになってきます。
◆
F値にしても何にしても、カタログの数値などは、モノの一面のみを見たものでしかありません。
どんなにいっぱい数字がカタログに載っていたって、それを全部集めてみても、そのモノの実際の能力までは再現できないんです。
身長、体重、性別、学歴その他もろもろの情報を集めたって、その人がどんな人かを想像するのは難しいのと同じです。でも、会って5分話をしてみるだけで、どんな大量のデータよりもその人のことを感じ取れるものだったりします。
だから、本当に何かを見よう、評価しよう、選ぼうと思っている時には、最終的には、数字などのデジタルデータから離れて、アナログな自分の感覚で判断せざるを得ないはずなんです。
今時はなんでもデジタル化の世の中ですけれど、デジタルデータでの分析はほんとのほんとのところではアナログでの概観には決して追いつかないです。デジタルでの分析というのは結局はモノをバラバラにして、その破片を何片か取ってきただけにすぎないんですから。
◆
とはいえ、感覚で選ぶのは非常に疲れますから、いつもできるものではありません。
それに比べて、データで選ぶのは非常に簡単なので、コレに頼りたくなるのも当然なんです。
だから大事な選択の時だけ、本気で感覚を使うようにすればいいんだと思います。どうでもいい選択の時は、適当に数字合わせで決めちゃったらいいんです。
「じゃあ、その選択が大事な選択かどうかはどうやって判断するの?」と言われるかもしれません。
ええ、その通りです。
そこも判断しなければならない選択の一つです。
そして、この「自分にとってどういう選択が大事かを考えること」が、きっと最初かつ最重要の選択なんです。生きていくなかで常に全身全霊、全感覚をもって向き合わなきゃいけない問題なんだと思います。
自分がどうしたいのか。どうしたくないのか。
何が欲しいのか。何が欲しくないのか。
何が好きで、嫌いなのか。
何が最も大事なのか。何が大事じゃないのか。
ここでは、誰もレビューを書いてもくれませんし、どこにもデジタルなデータは提示してありません。
自分で、自分だけで、自分の感覚だけで、決めるしかないんです。
――そして、それが、多分、人生なんです。
P.S.
というわけで、結局、サンプル写真見てみましたけど、よく違いがわかりませんでした。。。(ダメじゃん・・・)