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「貯金」が社会の毒になる ~金は天下の回りもの~

元旦にちきりんさんがお年玉を貯金なんてせずソッコーで使えという記事を書かれていました。

 

日本人はほんとに貯金好きですよね。

個人金融資産の預貯金の割合が国際的にも突出して高いことが知られていますし(参考)、ちきりんさんの言う通り「好きな物を我慢して貯金する」と言うと褒められるのが日本の日常風景です。日本では「貯金」はもはや美徳の域にまで達していると言えるでしょう。

 

でも、私も根っからの天邪鬼ですから、ちきりんさんと同じく、貯金を崇め盲信するのはとても危険なことと考えています。

 

誤解ないように明記しておきますが、ここで言う貯金とは「何か欲しい物があって貯めている貯金」ではなくて「欲しい物はあるけどそれは我慢して、将来の安心のために貯める貯金」のような具体的な目的が無い「貯金」のことを指しています。

 

前者のような目標額に達したらすぐに使うような貯金は良いんです。

でも後者のような「我慢して何となくとっておく貯金」は、実は社会においては毒物とも言ってよいぐらいやっかいな存在です。

 

今回はそんなお話。

 

金は天下の回りもの

そもそもお金とは物やサービスを交換するための媒介物で、お金そのものに価値があるものではありません。

冷静に見てみれば、ただの紙切れだったり、金属の薄い板だったり、通帳の上での数字でしかなく、お金それ自体に価値は無いですよね。

でも、買い物(交換)に使えるから、私たちはお金を大事にしているのです。

 

そう、あくまで「貯蓄」ではなく「交換」こそが、お金の価値の本質です。

人から人へ次々と移動することによってお金は輝くのです。

「金は天下の回りもの」と言いますが、まさにお金は「流れるもの」なのです。

 

しかし、「貯金」というのはその流れの停滞を生むものです。

交換の流れを止めるわけですからそうなります。

 

この停滞が曲者なんです。

 

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お金は社会の血液

「日本の対外貿易赤字が年々拡大しています」

「日本人のタンス預金が年々増加しています」

 

この2つの架空のニュースを聞いて、皆様の印象はいかがでしょう。

なんか前者はヤバそうですけど、後者はまあ貯金があるならいいことなんじゃ、って思ってしまいませんか?

 

前者が大丈夫とは言いませんが、でも後者も同じぐらい危険な状態の恐れがあるのです。

 

例えば私たちは大量出血すると死にますけれど、これは「血が無くなったから死ぬ」のでしょうか?

間接的には正しいのですが、厳密には違います。

 血がたっぷりあれば私たちは死なないのかといえばそうではないですよね。

例えば心臓が止まったらいくら体内に大量に血を抱えていても私たちは死んでしまいます。

 

そもそも、血は何のためにあるかといえば、細胞への酸素や栄養などの運搬・交換の媒介のためです。

そこにあればよいというものではなく、「交換する」のが血の役割なのです。

 

ですから、出血死は正確には「血が無いから死ぬ」のではなく、血が無くなると「血液を介した交換ができなくなるから死ぬ」のです。

つまり「血液の量」ではなくて「血液の流れ」が失われることこそが本当の致命傷なんです。

 

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社会におけるお金はまさに「血液」です。

 

「お金を稼ぐこと」を「飯を食っていく」と表現するように、私たちは日々お金を介して交換することでご飯を食べて生きています。

決してお金そのものを食べているのではありません。

これは細胞が血液を食べてるのではなく、血液が運んでくる栄養を食べているのと同じ構図です。

 

もしある日「お金の使用禁止例」が出たとしたら、急にまともに交換が出来なくなり、私たちはその日食べるものにも窮することでしょう。

そんな時、いくらお金ばかり持っていても残念ながら無意味ですよね。

「流れないお金」にもはや何の価値も無いですし、そしてお金そのものなんてお腹の足しにもならないのですから。

 

そう、お金についても本当の致命傷は「お金の量が無くなること」ではなくて、「お金の流れが無くなること」なのです。

 

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貯金は内出血

さて、前節の架空のニュースの話に戻りましょう。

 

「対外貿易赤字の拡大」はまさに国外への大量出血みたいなもの。

出れば出るほど体内(国内)を巡る血流が悪くなるので確かに危険です。

 

一方、「(基本的に使う気の無い)タンス預金」はどうでしょう。

この場合、確かに血液(貯金)は体内(国内)には存在しています。

でもよほどでないと使わないのであれば、それは血流に乗っているとは言えません。

つまり、これは血管内から出て体内の隙間に貯まっている血液――要は内出血なのです。

 

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体外に出血しないから安全・・・なわけはありません。

体内だろうと大量に出血すれば血流が悪くなるので人は死にます。

交換に携わる血流が減るなら、出血先が体外だろうと体内だろうと結果は同じです。

 

さらにマズイのは、血流が悪くなってくると細胞が皆こぞって「貯金」を始めることです。

いつ血流が途絶えるか分からないから不安だと、血液を貯めこむのです。

 

結果、出血で血流が減ったせいでさらに出血が増える(貯金で景気が悪くなったせいでさらに貯金を増やす)――そんな悪循環が生まれます。

しかも貯金(出血)が堅実で美徳な行為だとされているから、余計にその悪循環が強化されてしまうのです。

 

 

このように貯金とは良くも悪くも国内のお金の流れを止め景気を悪化させる行為です。

一人一人の分では少量でも、みんなが力を合わせて貯めこめばそれは社会にとって大量出血と変わらない毒性を発揮してしまいます。

 

もちろん全く貯金をするなというものではありません。

現実には貯金が必要な場面は多くあります。

しかし、その副作用について理解せずただ美徳として盲信し、無目的に過剰に貯めこんでしまうのは、みんなにとって非常に危険なことと言わざるを得ません。

 

 

何事も過ぎたるは及ばざるが如し。

 

貯金だってそうなのですよ?

 

 

 

 

P.S.

こんな話を書くと「そもそも貯金なんて貯まらないよ!」というお怒りの声がありそうですが・・・。

それも大事な問題なので、お金持ちがますますお金持ちになり、貧乏な方がますます貧乏になる「格差社会のメカニズム」についてもまた今度書きたいと思います。

 

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