雪見、月見、花見。

ぼーっと考えたことを書いています。

なんで英語を採用基準にするの?

グローバル化というものでしょうか。

採用基準に英語の能力を求める企業が多くあるようです。

就活だけでなくTOEFL必修化などと言って大学受験でも英語の要求水準を高める動きが活発です。

 

でも、私は不思議なんですよ。

なんで英語を採用基準にするんだろうって。

 

確かに外国の人とコミュニケーションを取る時には、ほぼ世界標準語と言ってもいい英語が使えないと文字通りお話にならないのは間違いないでしょう。

でも、それを承知の上で、私は採用時に英語力を求める必要性を疑問に思うんです。

 

以前、英語ペラペラの上司に尋ねたことがあったんです。

「英語どうやって上手くなったんですか」って。

そしたら、上司は「実は英語苦手なまま現地に飛び込んだんだけど、英語が必須の環境におかれたら自然に話せるようになってた」と言うんですね。

他、何人かの方々に聞いても、みんな結局「現地で覚えた」ようなんです。

 

もちろんそうは言っても英語の地力が高かった可能性はありますが、やっぱり注目すべきなのは「必要になったら英語力は伸びる」という共通体験がある点でしょう。

 

考えてみれば当たり前の話です。

英語圏の人は英語が日常で必要な環境で育つから英語力が伸びるし、逆に日本の私たちは日本語が日常で必要だから日本語力が伸びる。そりゃそうですよね。

もちろん子供の時が覚えが早いのはそうなのでしょうけれど、でもこれは英語力が伸びた経験のある方々のお話を聞いていると、やっぱり大人になってからでも通用する法則なのだろうと思うのです。

 

つまり、日本にいる私たちの英語力が伸びないのはそれはやっぱり必要じゃないから、ただそれだけなのではないでしょうか。

日本にいながら英語力を伸ばそうというのは、水が無いところで水泳の練習をしているようなもので、非常に非効率的なのではないでしょうか。

そんな水が無いプールでの練習だから水泳に苦手意識があるだけで、実際に水のあるプールでしばらく特訓していれば、なんだかんだで多くの人が泳げるようになる、そんな気がします。

 

 

ところで、公用語として見た時に、世界中に英語を話せる人は10億人以上いるそうです。

世界人口で見ればおよそ7人に1人は英語ができることになります。

 

これを聞いて、

「そんなに話せる人がいるんだから、やはり採用時には最低限必要なスキルだ」

そう言われる方もいるでしょう。

 

けれど、私は逆です。

「そんなに話せる人がいるんなら、採用時には問う必要のないスキルだよね」と。

 

なぜって、それは他のスキルをよっぽど優先した方がいいと思うからです。

 

確かにグローバルなビジネスでは英語は必要でしょう。でも、そんなの採用してから適宜実地に飛ばすなりして覚えさせたらいいんじゃないでしょうか。

だって、英語なんて世界の7人に1人が普通に習得しているスキルですよ。言ってみればそんなに珍しくもないスキルなわけで、要するに誰でも手に入れる可能性を持っているスキル、習得が容易なスキルなわけです。

 

一方、例えば100mを10秒以内に走るスキル。これってすっごくレアですよね。そしてそんじょそこらの努力じゃ習得はできません。

 

ここで、100mを10秒以内で走れて、かつ英語ができる人材が欲しかったとします。

その時、英語を採用基準にしますか?

しませんよね。

そう、まず100mを10秒以内で走れる人間を確保してから英語を覚えさせるのが、一番手っ取り早いはずです。

だってそんなに速く走られる人間はそうそうはいないけれど、英語を覚えることができる人間は山ほどいるんですから。

英語を話せる人間を捕まえて、100m走を特訓するより遥かに目がある勝負だと思いませんか?

 

さて、これを踏まえて、ビジネスではどうでしょう。

あなたがビジネスセンスが高くて英語もできる人材が欲しかったとします。

その時、英語を採用基準にしますか?

しませんよね。

そんなの、やっぱり、ビジネスセンスが高い人間を確保してから英語を覚えさせるのがいいに決まってます。企業としては欲しくてやまないはずの100m走で言う10秒以内のレベルの卓越したビジネスセンスを持っている人の方がよっぽど貴重だからです。

 

もちろんこの話は、翻訳家や通訳になるだとか、英語で小説を書くだとか、英語でトークショーをするだとか、英語そのもののスキルでビジネスをする場合は話は違ってきます。

でも、多くのビジネスは「英語そのもの」で勝負するものでしょうか?

「英語力での最先端」を目指す勝負でしょうか?

「英語力がすごかったら」それだけでいきなりウハウハ儲かるのでしょうか?

きっと、そうではないですよね。

 

なら、英語より優先すべきスキルは山ほどあるのではないでしょうか?

 

英語は「後から習得可能」で「普遍的」で「支持的」なスキルでしかないのですから、他の「後から訓練不可能」な「独特」で「決定的」なスキルを持つ人を優先すべきではないでしょうか?

 

英語を使える人に、高度なビジネスセンスを学ばせるより、高度なビジネスセンスを持っている人が英語を使えるようにする方が簡単なんじゃないでしょうか。

 

それなのに、わざわざ英語を採用基準、それもその中の高位置に上げてしまったから、英語が必要ない日本という英語を学ぶのに不利な環境の中で無理矢理英語を学ぼうとする人が増えてしまったんです。

その労力の分を、他の勉強に割いてもらって、英語の習得は必要な環境に置くことで学ばせれば、どれだけ効率が良いでしょう。

これは日本人全体で見たら、大きな機会損失だと思います。

 

もちろん英語力は高い方がいい、それはそうです。

でも、英語力を高める分、何かが伸び悩むこともあるはずです。

交換可能な、後から挽回可能なスキルはどれで、どれが希少で優先すべきスキルなのか。

それを忘れてしまうのは非常にもったいないんじゃないかと思います。

 

 

ということで。

私はほんと不思議なんですよ。

なんで英語を採用基準にするんだろうって。

 

 

採用基準

採用基準

 

 

P.S.

「英語を使える人材が即戦力として必要なんだ」という企業もあるでしょう。それなら、確かに一理あります。

でも、実際には、採用基準に高い英語力を問われて入社したのに、やることは英語が必要のない日本社内の雑用ばかり、という馬鹿馬鹿しい話も聞きます。

そんなことを聞くと、どこまでほんとに「英語力」を求めているのかも、私には何だか怪しいものに見えてしまうのです。