原発問題、短期で見るか、長期で見るか?
昨日のお話で書いたような、目の前の★を得るか、未来の★を得るか、という問題は実は色んなところで私たちの選択に影響しています。というよりむしろ、私たちの悩み事のほとんどと言ってもいいかもしれません。
例えば、
目の前に美味しそうなケーキを見ながら、将来の体重を考えて食べるか食べざるか悶絶したり、
きっと将来に役に立つ勉強なのだけど、今はまだ遊びたくてやる気が出なかったり、
姿形を変え、★が私たちの目の前を右往左往して、選択をなかなか決め難くしています。
なぜ、私たちは悩むのでしょうか。
どちらが大事か単純に比較すればいいだけではないでしょうか。
それは、先ほどの例でも分かる通り
目の前の★=短期の損益
未来の★=長期の損益
と、同じ★でもそれぞれ見る視点が違うことが原因です。
目の前の★は短期決戦ですので、すぐに★の損益が決まります。多くの場合、悩んでる時には既にその★の大小は決まっているものですが、分かりにくい場合もあります。
より分かりにくいのは未来の★です。これは未来を見る長期決戦です。ですから、今何となく★の大小の想定はできるのですが、実現までに時間があるので、様々な他の要素が影響してくる可能性があります。つまり、それがどうなるか分からない、つまり★が増えるかもしれないし、減るかもしれないし、下手をしたらゼロかもしれない。
未来の★には未確定さ、不確定要素の多さがあるせいで、どうしても私たちの目を眩ませるのです。
だから、短期と長期の星取表は単純な★の数の大小で比べにくいのです。
そもそも比べられないものと考えてもいいでしょう。
この視点から、選択肢というのは以下の4パターンに分けられます。
- 短期的にも利益、長期的にも利益
- 短期的には利益、長期的には損失
- 短期的には損失、長期的には利益
- 短期的にも損失、長期的にも損失
これで全部です。
1.と4.は簡単です。1.はやればほぼ確実に利益が出る見込みですし、やればいいのです。4.は逆ですね。
だから、私たちが悩むパターンは2.と3.です。
このパターンに陥ると、急に決めるのが難しくなるのです。
もちろん、ここでどう決めたらいいという正解が分かるわけではありません。ただ、どのパターンで悩んでいるのかと認識することは、私たちの考えを整理することになるんじゃないかなと思うのです。
例えば、このパターンは、今の日本で重大な課題となっているかの「原発問題」にも見られます。
原発を廃止するべきか、継続するべきか。
本当に難しい問題ですよね。
ここで、よく「原発継続派」「脱原発派」それぞれの主張を見ると、まさに上の形にハマっていることが分かります。
原発継続派は
「原発をやめたら経済的に損だよ、続けても長期的な被曝の被害はそんなにないよ」
と、主張します。
これは原発継続が短期的には利益になるし、長期的にもそんなに損失がないよという言い方です。
脱原発派は
「原発をやめても経済的な損はそんなにないよ、続けたら長期的な被曝の被害は甚大だよ」
と、主張します。
これは原発継続はの短期的利益はそんなにないけど、長期的な損失が大きいよという言い方です。
どちらも原発に関して2.のパターンであることは違いがありません。
ただ、大きな違いは短期的な利益の大小と、長期的な損失の大小の見方が全く逆ということです。
原発をやめることによる、短期的な経済損失の大小。
原発を続けることによる、長期的な被曝の被害の大小。
これらが、ほんとに正反対なのです。
もちろん、意見が分かれてる2派の比較ですので、正反対で普通です。
ですが、私が気にしているのは、それぞれが上の悩みのパターンを本当に認識しているかです。
原発継続派は、実際には「原発の短期的経済効果」に偏った言い方の方が多いです。
「原発を止めていてもコストが余計にかかるだけ。脱原発派はそれが分かっていない」
のように言い、知らず知らず短期視点ばかり見ている人が多い印象です。
では、長期的に見て原発をどうやって止めるのか、それとも永遠に止めない気なのか、そのあたりはあまり議論されません。
前回の話のように、「短期的な利益」を重視しすぎてしまうと、決して次のステージに行くことはできません。「損をしてでも未来に進む勇気」がないと、いつまでたっても革命は起きないのです。
継続派の言うとおり、原発の事故のリスクが低いとします。しかしそれも永遠に継続しているのであれば、いつかは起きます。それを果たして容認してよいのでしょうか。いつかは脱原発をしないといけないのではないでしょうか。
それは、いつでしょうか?
そしてもし将来、今の原発継続派が「さすがに、そろそろ脱原発しようかな」という時に「短期的に損失があるので困る」という反対が起きたらどうするのでしょうか。
その短期的な視点で主張していたあなたの意見が、その時あなたを刺すのです。
短期的損益だけで、問題解決を主張していれば、いつまでもその呪縛から逃れられなくなってしまうのです。
脱原発派も、実際には「原発の長期危険性」に偏った言い方の方が多いです。
「原発は危険。今撒き散らされている放射性物質の影響も将来出てくるだろうし、事故はいつかかならずまた起こる。原発継続派はそれが分かっていない」
のように言い、知らず知らず長期視点ばかり見ている人が多い印象です。
では、短期的な経済的損益をどうするのか、誰がそのコストをカバーするのか、その当たりはあまり議論されません。
大きな視点での経済規模の比較で、「火力や再生エネルギーに乗り換えても額面的には意外と変わらないよ」という意見は時々あります。しかし、たとえどんなに全体の額面が同じであったとしても、「原発に拠って生計を立てている」人というのは必ず存在するのです。
長期的なみんな利益のためには、彼らの犠牲はやむを得ない、そう言うのでしょうか。
しかし、では原発以外の問題で、「長期的なみんなの利益のために、あなたの仕事を奪います、我慢してね」という問題が出た時に、脱原発派の方は果たしてどうするのでしょうか。素直に自分を犠牲にするでしょうか?
長期的な視点で主張していたあなたの意見が、その時あなたを刺すのです。
長期的損益だけで、問題解決を主張していれば、いつまでもその呪縛から逃れられなくなってしまうのです。
私は原発問題の短期的経済損益や長期的被曝の見解、どちらが正しいのか分かりませんし、どちらを支持するものではありません。
ただ、短期的な損益問題と長期的損益の問題は、どちらも大事で、どちらも同じように考えないといけない問題なんだと思うんです。
お互いに知らず知らずに、自分の意見に有利な側面だけを主張していないでしょうか?自分に不利な側面に目をそむけていないでしょうか?
どちらも自分の意見の都合のいい点ばかり見て、都合の悪い点に蓋をしていないでしょうか?
短期的な視点、長期的な視点、単純に比較できないからこそ、正解が無いからこそ、どう重視するかは人によって多様になります。
だから、相手のその重視配分は尊重するべきだと思います。
原発継続派は長期的には危険があることは認めないといけません。継続することのデメリットもちゃんと見ないといけません。それを誤魔化して、小さく見せるようなことや、短期的損益の話に終始して目をそらせるようなことをしてはいけません。その上で、今は継続するとしても、将来原発をどうするのかをちゃんと提案しないといけないでしょう。
脱原発派は短期的には損をする人がいることは認めないといけません。中止することのデメリットもちゃんと見ないといけません。それを誤魔化して、小さく見せるようなことや、長期的損益の話に終始して目をそらせるようなことをしてはいけません。その上で、今すぐ脱原発するとしても、原発に拠って生きていた人たちの生活をどうするのかをちゃんと提案しないといけないでしょう。
短期的視点・長期的視点、それぞれだけで議論しても仕方がないんです。
問題というのは、短期・長期併せて1つの問題なんです。
悩み事のパターンをしっかり認識しないといけないんです。
ダイエットする時に、このケーキは低カロリーだから、といい食べ続けていれば、いつまでたっても痩せません。
「ダイエットは明日から」
その明日はいつですか?
学生時代に「将来のため」と言って寝る間も惜しんで勉強していては、人生の中の大事な時代を捨ててしまうかもしれません。
「将来楽をするために我慢」
多分、そう言う人は、社会人になっても老人になっても、いつまでたっても「今」を楽しむことはないでしょう。
「今」も「未来」もどちらも大事なんです。
両方を一緒に考えるのはほんとうに難しいです。
でも、だからといって、「今」しか見なかったり、「未来」しか見なかったり、それではダメなんです。
何より、「今」の主張と、「未来」の主張で言い争っても仕方が無いんです。
視点が違うのですから、そもそも比べようがないんです。
どんなに難しくても、どんなに悩ましくても「今」も「未来」も同時に考えるしかないんです。
そこから逃げてはいけません。
そんな「今」と「未来」の全体像をお互いが提示できて初めて、歩み寄れるのじゃいかな、そう思うんです。
結局、大事なのは相手の意見の尊重です。
「今」を犠牲に「未来」を見るだけでは、
「未来」を犠牲に「今」を見るだけでは、
どちらも足りません。
難しいです。
でも、やらないといけないんです。
簡単だから考えるじゃないんです。
難しいから考えるんです。
だから、みんなでもっと考えていきましょう。
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P.S.
といっても、普段、ダイエットは明後日から・・・ぐらいの人間なので、説得力無いですね(/ω\)