騙されてもいいの。
自分のことを嫌ってる人が、一番信じられる。
そう思っちゃうことがあって。
好きって言ってくれる人が、全員自分のことを好きなのかはちょっと怪しい。
社交辞令だったり、上手いこと利用しようとしていたりするかもしれない。
だって、詐欺師はいつだって笑顔だもの。
自分のことを嫌いと言ってる人の中で、本当は好きって人は多分いない。
だから、嫌いって言ってくれる人、嫌いな態度を取ってくれる人は、
絶対自分のことが嫌いって意味で、間違いなくて、確かな存在に思えて、
この人に騙されることはないし、裏切られることもない。
そういう不思議な安心感があって。
みんな優しくしてくれて、好きって言ってくれて。
でも、本当に私のことを好きなのか、不安でしょうがなくて。
試してみたくなって。
それで、確認できたら少し安心してみて。
でもまた、少ししたら不安になって。
また試す。
その度に人数が減っていって、
そして誰もいなくなって――
でも、みんな自分のことが嫌いになってくれたみたいだから。
これでやっとみんなのことが信じられるよ。
あぁ、ようやく一安心。
だけど。
・・・だけど、これがお望みの結末?
そうじゃなかったような気がする。
好きってことは、信じるってことは、きっと「騙されてもいい」の裏返し。
完全に信じられる証拠を集めようとすると、嫌われるし、逆に信じてもらえなくなる。
「騙されないように」
大事なことだけど、やり過ぎはよくないんだよ、きっと。
悪い人に騙されて、泣いてるあなたとか、あの人とか。
騙されないように上手く立ちまわってる人なんかより、
ずっとずっと素敵な人なんだろうなって思う。
だって、みんな人を信じられる勇気があったんだよね。
好きになる不安に耐える強さがあったんだよね。
臆病だから私はよく逃げてしまってて。
騙される不安におびえてしまっていて。
でも安全な方に向かっていたはずなのに、そこはとても暗くて冷たくて。
賢く動いていたはずなのに、得られるものより失うもののほうが多くって。
やっと気づいた。
騙されたり、泣いたり、悲しんだりする人は、
それだけ、
信じ合えたり、笑ったり、喜んだりもできてるんだ。
そこはきっと本当に明るくて暖かいんだろうなぁ・・・。
だから、私は、みんなを尊敬してます。
本当に。
もう信じてくれないかもしれないけれど。