嘘がつけない相手
季節はどんどん移ろいゆいて、強い風に乗って、いつのまにかもう春の足音が聞こえています。
そんな季節、新年度の始まりはいつも、エイプリルフール、嘘つきの日からです。
私は生来いたずらっこなので、こういう日には色々と人を驚かせるような嘘が何かないかなとうんうん唸って考えています。
今年は日曜日ということもあって、何かと仕掛けがしにくいですし、なかなか思いつきません。
しかし、こうして「面白い嘘」を考えていると、そもそもの「嘘」というものについても自然と考えてしまいます。
私たちはほとほと嘘をつく生き物です。
他人を騙して自分の利益をついばむための欲張りな嘘。
あえて隠すことで誰かを助けようとする優しい嘘。
嘘が良いか悪いか、これはよく議論になるところですけれど、このように嘘にも色々ですので、なかなか正解はないのかなと思います。
ともかくもエイプリルフールだけでなく、日々私たちは意識的・無意識的にかかわらず、多くの嘘をついて生きています。
でも、絶対に嘘がつけない相手が一人だけいます。
それは自分自身です。
本当にやりたいこととか、本当にほしいものとか、本当は思っていることとか、自分自身には隠せません。
当たり前のことのようですが、しかし、実際に私たちは自分自身に嘘をつこうとあがいてしまうことが少なくありません。
自分の思いと違う行動をしてしまうこと、誰しも覚えがあるのではないでしょうか。
みんなが遅くまでがんばっているから、本当はしんどいのに居残り残業をするとか。
みんなが「とりあえずビール」から始めるから、とりあえずビールを頼んでしまうとか。
みんなが結婚するから。
みんなが大学に入るから。
みんなが言っているから。
みんながやっているから。
本当は君のことが好きなのに言えないとか。
理由は様々あると思います。
言い訳も色々あると思います。
でも、どんなに取り繕っても自分では自分に嘘がつけません。
自分の本当の思いが、実行できなかった。
それは、多分、ただ勇気が無かっただけなんです。
自分の思いを外に突きつける勇気が無かっただけなんです。
自分の思いを外に出して、自分が傷つくのが怖かっただけなんです。
自分の本当の思いを他に人にも偽って、自分自身も騙そうとして。
これが、多分世界で最も多くて、最も大きな嘘なんだろうなって思います。
でも、これはやっぱり自分にはどうしても嘘って分かってしまって。
それを振り返っては後悔して。
いつまでもいつまでも、こんなことを繰り返して。
ああ、なんで私たちはこんなに素直になれないんだろう。
狙って決められたわけじゃないのでしょうけれど、新年度の最初の最初がエイプリルフールであることは運命的なものを感じます。
私たちが今年度、後悔の無い一年を過ごすため、本当に嘘がつけない相手が居ることを再認識させてくれている。
そう思えませんか?
私たちはほっておくと、やっぱり嘘をついて、ついついフールになっていまいそうだから、最初の最初に考える機会が作られてるんだと思います。
――後悔の無い人生を送りたい。
私はずっとそう思って、なるべく自分に素直に生きてきたつもりです。
それでも、まだまだ自分に嘘をつこうとしてしまっているところも多いです。
新年度の最初の最初。
せっかくなので昨年度最も後悔していることを、新年度にくつがえせるように密やかに宣言したいと思います。
ずっと言えなかったけど、君のことが大好きです。
近いうちにきっと君に言いにいきます。
・・・さて、今日はエイプリルフールですね。
これが本当か嘘か、ご想像にお任せいたします。
私にはもちろん本当か嘘か分かっています。
だって、自分には嘘はつけませんから。