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雪見、月見、花見。

ぼーっと考えたことを書いています。

ユートピアでも解決できないマッチング問題

考えてみた 社会

私は時々極端な世界を想像して「どんな感じかなー」とボーっと考えてます。

思考実験と言うか、妄想と言いますか、とにかく頭の中で仮の世界を思い描くんです。

目の前のこの世界における具体的な現実問題を考えるのも好きなんですけど、どちらかと言えば、こんな夢想的な話を考える方が好きなタイプだったりします。

 

それで、こないだはこんな想像をしていました。

 

「とにかく自由で平等で、技術も高度に発達した世界なら、みんな幸せになる?」

 

自由で平等で、高度な技術を持った世界。

日本を始めとした自由世界の理想の延長線上、まさにユートピアと言ってもよい世界です。

現実の世界では、様々な格差や差別や不満が渦巻いていますが、こんな極端なユートピアならちゃんとそのような問題がキッチリスッキリ解決して、みんな幸せになれるんじゃないかって、ふと思ったんです。

 

でも、よくよく考えると・・・、そんなユートピアであっても、やっぱりみんなが平等に幸せになるのは難しいんじゃないかという結論に至ってしまいました。

 

その理由が、ユートピアであっても、タイトルにある通り「マッチング問題」が解決できないからです。

 

ここでは「マッチング」とは、人と人のペアだったりグループを作る行為を指します。

そして、「マッチング問題」とは、ある人が、ある人とペアを作りたかったり、あるグループに所属したいと思っているにもかかわらず、それが実現できない状態を意味しています。

 

具体的には、「結婚」や「就職」が代表例です。

 

AさんがBさんと結婚したいと考えていたとしても、BさんもAさんと結婚したいと思っていなければ結婚できませんね。現実の日本社会でも既にそうですが、とにかく自由で平等なユートピアではもちろんBさんのAさんと結婚したくないという自由意思は尊重されなければなりません。

結果、Aさんの欲求とBさんの意思が相反することになり、この結婚は成り立たず、Aさんの欲求が満たされることはありません。すなわち欲求不満が生じるということで、Aさんの幸福度は下がってしまうでしょう。

 

就職も同様です。

AさんがC社に入社したいと考えていたとしても、C社がAさんを採用したいと思わなければ、AさんはC社に入社できません。なぜなら、C社も会社という人でない存在ではありますが、実質はユートピア内で自由を保障された個人の集団ですから、C社のAさんを採用したくないという意思決定の自由も尊重されないといけません。

結果、Aさんは入社したかったC社に採用されず、欲求不満になってしまいます。

 

もちろん、毎回このようにマッチングが成立しないわけではありません。

BさんはDさんと相思相愛になり結婚するかもしれませんし、C社は入社希望のEさんを気に入り採用を決めるかもしれません。

 

問題は、ちゃんとみんなの自由意思を平等に尊重したにもかかわらず、結果としてDさんやEさんのように希望通りマッチングできちゃった人とAさんのようにマッチングできなかった人が生じてしまうことです。分かりやすく言えば結婚したいのに結婚できない人が出てしまうということですね(なお、ユートピアでは結婚したくないのに本人の自由意思に反して結婚させられちゃう状況は無くなります。とにかく「自由」な世界なので)。

これは当然、幸福度の格差につながりますから、「みんな幸せ」という状況とは言い難いところです。

 

ユートピアであっても、「マッチング問題」が解決できないというのはこういうことなんです。

 

 

そして、その上で考えていただきたいのは、ここが高度に技術も発達したユートピアということです。

まるで一振りで食べ物も衣服も家もテレビも自動車もスマホも何でもかんでも出てくる魔法の杖のように極端に技術が発達してる状況です。

ただただ時間のかかる雑用だってロボットが何でもこなしてくれるでしょう。

このような想定の世界では、物質的な面では満たされるので、「貧困」「多忙」のような物質的・時間的な格差や不満は、現実世界に比べ、完全に無いか非常に少なくなっているはずです。

その一方で、先ほどのような「マッチング問題」はあまり解消されず、今現在の現実世界とほぼ同等に残されます。

つまり、「マッチング問題」が目立って取り残されることになるわけです。

 

結婚したいけどできなかった、でもその代わりお金は他の人に比べいっぱい持ってるので独身貴族として豪遊を楽しめる。

やりたい仕事につけなかった、でもその代わり他の人に比べ相対的に楽な仕事なので自由時間を満喫できる。

のように、「マッチングできなかった」代わりに、他の優位点を見つけることで自分の中の欲求不満を和らげることが現実世界では可能ですが、ユートピアではみんなお金も時間も持っているので、その点での優位性は持てません。

なので、マッチングできた人か、マッチングできなかった人か、だけで人に差がついてしまいます。

 

ここからは、幸せとは自分の中だけで完結する絶対的なものなのか、人と比較して感じる相対的なものなのかという議論も出てきてややこしいのですが、物質的な欲求が満たされていたからといって関係性的な欲求が満たされなかった場合、その上で関係性的な欲求も満たしている層が同じ世界に多く存在している場合に、果たして人はどれだけ幸福を感じられるでしょうか?

個人的な印象としては、やはりこれで「みんな幸せ」とはならないんじゃないかなと思うんです。

 

 

この「マッチング問題」を解消するには方法が無くはありません。

 

一つには、マッチングのハードルを皆が一斉に下げることです。要するに「あの人と結婚したくない」とか「あの人と一緒に仕事したくない」という他人の足切りがほとんど無ければマッチング問題は起きません。ただ、そんな「誰でも良い」みたいな意思が、個人の個性的な「意思」と言えるのかどうか、皆が同時にハードルを下げることを想定するのが「自由な世界」と言えるかどうか非常に疑問です。

 

もう一つは、クローン人間を作ってしまう作戦です。例えばBさんと結婚したい人がAさんを始め3人いたとしたらBさんを3人作ってしまうという荒業です。これでマッチングの確率は上がります。ただ、複製されたBさんのAさんと結婚したくないという「自由意思」は無視なのか、そもそもAさんも「複製があるBさん」と結婚したいのか(世界にただ一人のBさんがいいのでは)、マッチングが就職だったらC社社員を全員複製しないといけないなど、なかなかカオスな状況が生まれます。

 

最終手段としては、誰かの「自由」を制限する方法があります。

AさんがBさんと結婚したいけど、誰もAさんと結婚したい人がいなかったならば、Bさんの「自由」を制限して、BさんをAさんと結婚させるという方法です。

Bさんを自由保障の対象外(すなわちマッチング問題の対象外)とすることで、自由保障対象者内でのマッチング問題を解消するという豪腕な方法です。

ひどい話のようですが、結婚相手の選択の自由が当人に無い時代は歴史上長く有りましたし、現代でも会社の採用は全くの「自由」ではなく色々条件がついています。なので、不思議な話ではないのですが、ユートピアの設定の「とにかく自由な世界」とは言えない状態にはなってしまいます。

 

このように「マッチング問題」を解消しようとすると、どうしても自由や平等を制限したり、人々の価値観(多重婚の許可、人間の複製容認など)を操作したりしなくてはならなくなり、ユートピアの「とにかく自由で平等な世界」から離れてしまいます。

これが「マッチング問題」の最大のジレンマになります。

 

 

以上のようなことをボーっと考えて私は「ユートピアでもみんなが幸せになることは難しい」という悲しい結論に至ったのですが、恐らくみなさん「そんな想像上の話をして、だから何なんだ。現実世界ではそうはなってないんだからどうでもいい」と思われるかもしれません。

 

確かに、今現在の現実世界の問題を考えることは大事です。

こんな想像上の話をいくら考えても目の前の問題は解決できません。

ですが、私たちの社会が目の前の問題ばかり解決するだけで十分かといえば私はそうは思えません。

目の前の問題ばかり考えることは、通行の障害になっている道の石をどける作業ばかりで、そもそも自分たちがどこに行きたいのかを考えたり議論しないようなものです。知らぬうちにグルグル回っていたり、あらぬ方向に進んで行ってしまっている危険性があります。

私たちがどこに行きたいのか、行った先はどうなっているのか自分たちで考えなければ、私たちの社会の針路は決まらないのです。

特に「行った先がどうなっているのか」を一度立ち止まって考えることは、大声で理想を掲げ、あたかもそれで何でも解決するかのように宣伝する者に扇動されないために必要なことと思います。

 

ですから、今回の「マッチング問題」の議論で言えば、私たちの社会が「マッチング問題」とどう付き合いたいのかが問われています。

 

「マッチング問題」は必要悪としてマッチングできなかった方々の不幸は容認するのか、逆に「自由」や「平等」を制限することで「マッチング問題」の解消の方を選択するのか。

 

理想の上でも全てを満たすことができないという厳しい現実のもと、私たちは理想をどう掲げるのか考えなければならないのです。

 

 

さあ、どうしましょう?

 

 

 

 

P.S.

ユートピアでも「就職」があるかどうか、というところはちょっと議論があるかなとも思います。ただ、雑用はロボットにまかせて無くなっても、「意思決定」的な仕事は人の価値観を問うものですから、人以外は回答できません。なので、多分、人の「仕事」が完全に無くなることはないんじゃないかなとしました。

それに、「仕事」じゃなくて、趣味の「サークル入部」でも何でもいいですし。

 

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