雪見、月見、花見。

ぼーっと考えたことを書いています。

ワーキングマザーを悩ませる「病児保育問題」

私の同僚には新米ママさんがいます。

 

とても真面目で優秀で人柄もよくて、と非の打ちどころがない人材だったので、出産後仕事どうするのかなーと心配していたのですが、幸い、お子さんを日中は保育園に預けることができて、今まで通りフルタイムのまま(残業はしないけれど)バリバリ働いてらっしゃいます。

 

もともと仕事が好きだった子なので、日中働いて、それ以外の時間で子育てという時間割は、他人の私から見ても、公私共に充実した生活としてすごく羨ましく思います。

もちろん、その分とってもハードワークでしょうけれど(^_^;)

 

さて、妊娠中から「保活」が必要だなんて冗談のような話もあるぐらい、世の中で保育所不足が叫ばれてる昨今ですが、「女性の社会進出の奨励」や「少子化対策」などの気運もあって、徐々にママさんが働きやすい環境が整備されてきているようです。

 

しかし、ママになった彼女と一緒に働いてるうちに、子育てと仕事の両立には「待機児童問題」に加えて、実はもう一つ大きな難問があることに気付かされました。

 

それは、「病児保育」の問題です。

 

普段何事もない日は、本当に何事もないのです。

でも、

「すみません、子どもが熱を出して・・・」

そう言って、しばしば彼女は仕事を休んだり、遅刻したり、早退したりするようになりました。

「今日は行けなくなりました」と当日始業時間に本人から連絡がある時もあれば、仕事中に保育園から「熱発した」と連絡が入って、急遽帰ることもあります。

 

子育てのご経験がある方は御存知の通り(つまり、独身の私は知らなかったのですけれど・・・)、子どもというのはほんとよく熱を出します。

もちろん予告があるわけもなく、突然熱発するのです。

 

ワーキングマザーの方々にとって、これは一大事です。

なにせ、熱発は仕事の大事な予定が入っている日だろうがなんだろうが、お構いなし。病気は大人の都合なんて考慮してくれません。

朝、子どもの様子がおかしいなと思って体温を測ってみると「きゃー、高い!」「でも、今日はどうしても仕事に行かないとまずい日なのにどうしよう・・・」と、一日の始めからしてパニック状態です。

 

熱があっても保育園に預けることができたらいいのですが、普通の保育園では「熱が○○℃以上ある」「感染性の病気」「具合が悪そう」などの条件で「病児」の預りはできないように決まっているそうで、それはかないません。

病気の子も預かってくれる「病児保育」を行っている施設やサービスもあるようなのですが、受け入れのキャパシティが少なくて慌てて連絡してみても当日は一杯だったりとか、お値段が高かったりとか、自分の家から離れていたりとか、なかなか難しい現実のようです。

 

なので、追い込まれたお母さんたちは仕方なく、多くの場合、(私の同僚の子と同じように)仕事を休むことになります。

それも急に休むわけですから、その分の仕事は同僚たちに振りかかることになります。あるいは、担当者が欠けたせいで仕事の進捗そのものが滞ってしまう場合もあるでしょう。

これが、また悲劇を生むのです。

 

私自身、彼女のお子さんの熱発の煽りを受け、いきなりお仕事が降りかかってきたことがあります。

事情は分かっているので同僚として「まあ、仕方ないよねぇ・・・」と思いつつも、やっぱり人間ですから、仕事が降ってくるとなると気分が良いものではありません。

中には我慢の限界に来てしまう人たちもいるようで、「仕事を振られた腹いせ」にか、ワーママさんたちが同僚から辛く当たられるケースもあるそうです。

※「ワーママ」:ワーキングママの略

上司からしても、仕事がこうも頻繁に滞られては困ると、ワーママさんたちに「何とかならんのか」と苛立ちをぶつけたり、暗に退職を勧めるケースもあるとか。

 

一方のワーママさんたちも、そんな「職場のみんなに迷惑をかけている」という罪悪感から、非常に苦悩するようになります。

googleで「子供 発熱 仕事」と打ち込んで検索していただくと、ワーママさんたちの大量のそんな「悩める声」を見ることができます。

もう、見ていて、ほんと辛いぐらい。

 

私が聞いた話では、子どもの熱発で仕方なく早退しなきゃいけなくなった時に、「すみません、すみません」と泣いて謝りながら職場を後にした方がいるとか。

そしてそれを見る同僚の目線がまた冷ややかで――。

 

ひどい話すぎて、言葉になりません。

 

実際、職場に対する罪悪感から、仕事を辞められてしまうママさん方は少なくないそうです。

運良く、保育園に子どもを預けることができて、本人に仕事と子育ての両立というハードワークをこなす能力があったとしても、この「病児保育」の問題がネックになってしまうのです。

 

何なのでしょう。

どうなんでしょう。

 

独身の私は当事者ではないですけれど、このやるせない現状がとても悲しくてなりません。

ワーママさんたちが罪悪感を抱くことなく、同僚や上司がワーママさんたちを憎まなくて済むように何とかできないものでしょうか。

 

 

根本的な解決策があるわけではありませんが、私なりにこの「病児保育」において解決すべきポイントを整理してみましたので、ちょっとご紹介します。

 

 

①「病児保育」環境の整備

やはりまずは、言うに及ばず「病児保育」環境の整備が必要でしょう。

 

贅沢を言えば、「病児」を預かってくれるだけでなく「医療施設併設型」であったり小児科への受診も必要時には代わってくれる、そんなサービスが理想です。「病院に連れて行く」という行為も、仕事の定常状態を崩す要因になりえるからです。

そしてまだ多いとは言えない「病児保育」対応の施設やサービスを、急な事態に速やかに対応できるようもっと多くの地域で充実させて欲しいところです。

 

そのように、子どもの熱発という「突然起こる」「予想できない」イベントの衝撃を吸収できるセーフティネットが無ければ、ワーママさんたちには「いつ休んでも大丈夫な」「だれでもいつでも替われる」ようなそんな仕事しか回ってこなくなります。

 

それは彼女たちの優秀さを活かせなくなってしまいますし、そして彼女たちのモチベーションをも奪います。これは会社だけでなく社会の損失でもあるはずです。

 

しかし、私自身、最近になってこの問題を知ったぐらいで、「待機児童問題」に比べるとまだ「病児保育問題」はあまり注目されてない印象があります。

 

もちろんそもそもまず保育所に入れなくては「病児保育」もクソもないというのも分かります。ただ、保育所に児童が全入できるようになったとしても、まだ後ろにそびえているハードルとして、やはり意識されるべき問題と私は思います。

 

だって「待機児童解消」は「女性の社会参加」を進めるためにやってるわけで、「待機児童解消」がゴールではないのですから、当然次のことも合わせて考えるべきでしょう。

 

現場ではすでに(というより、かねてから)問題化しているのですから、保育問題の両輪として同時に対策を進めていくぐらいがちょうどいいのではないでしょうか。

 

そして私たちみんなもこの問題についてそれぞれよく知り考えていかないといけません。

そのためにも、もっともっとワーママさんたちの声に耳を傾けるべき、そう思います。

 

②父親の「子育て」参加

とはいえ、「病児保育」というのは、やはり元気な子より手間がかかるということや、「病児に対応できる」専門性が要求されるということで、人件費がどうしてもかかるようです。

また、他児への感染のリスクのことも考えると、一概にどんな時も施設に預けるのが良いとも言えないでしょう。

だから、特に「病児保育」のサービスを受ける必要が無い時には、何でもかんでも預けるというのではなく、やはり親自身で面倒を見ることを躊躇してはいけないところと思います。

 

しかし、そんな比較的「休みやすい」日であったとしても、仕事に全く影響がないはずはありませんから、「また休みやがって」というような同僚の負の感情を呼び起こしてしまわないとも限りません。

実際に、そんな小さなことの積み重ねで、職場の亀裂が生まれることはありうることだと思います。

 

例えば、「病児保育問題」ではありませんが、似たような話として、昨日話題になっていたこんな記事。

女ってやっぱり妊娠するよね、当たり前だけれど。

部下の女性の妊娠で、今後のプロジェクトの進行を憂う上司のつぶやきです。

この方は決してこの部下の方を責めることはしていませんが、やはり現実に困ってしまう以上、中には「これだから女は・・・」と考える方がいてもおかしくはありません。

 

私が大分前に書いた記事、

なぜ、女性社員は使えないのか? だそうです。 - 雪見、月見、花見。なぜ、女性社員は使えないのか? だそうです。 - 雪見、月見、花見。

なぜ、女性社員は使えないのか?というまとめ記事を見かけました。(・・・のですが、しばらくぶりに見ますとリンクが切れているようなので、別の参考記事としてコチラなど...

この中でも

 「やれ結婚だ出産だ子育てだ・・・
 まともに仕事に時間が裂けないなら社会進出しないでくれ」

 こんな意見があったことをご紹介しました。

 私がこの意見に私なりに反論していたら、ちょっと炎上しましたし(^_^;)、やはりこのような「子ども関連イベント」にかこつけての「女性社員憎し」という心理をお持ちの方は案外少なくないように思われます。

 

でも、ここで私はちょっと疑問なのです。

 

「妊娠」・「出産」は女性にしかできない行為なのでさておき、今回問題の「育児」って「女性社員の問題」でしょうか?

 

「病児保育」関連でネット上で調べていても、「ワーママさんたち」の悩める声ばかりでてくるのですが、これはよくよく考えたら、すっごくおかしいことではないでしょうか?

 

つまり、

 

――旦那はどこいったよ、旦那は?

 

そうなんですよね。

この問題に関して、妙に「父親」の影が薄いんです。

 

もちろん、育児に積極的に参加している旦那様方が居るのも知っています。

先ほども、子どもが熱発した時に「旦那が休んでくれて助かった」というネットの記事を見かけましたし、私の知り合いにも普段からうまく奥さんと子育ての役割分担をシェアされてる方がいます。

 

でも、それでもやっぱり、世の空気を見る限り「父親」は圧倒的に影が薄いんです。

「病児保育問題」の主役は「母親」になっていて、「父親」は脇役扱いなんです。

 

子どもが病気になったら、まずは「母親」が休むかどうか悩むべきなのでしょうか?

休んだ結果仕事場に迷惑をかけてしまった場合、「母親」ばかりが罪悪感を抱くべきなのでしょうか?

子育てと共働きが上手く行かなくなった場合、まず「母親」が退職を検討するべきなのでしょうか?

 

・・・そうではないでしょう?

 

子どもが病気になったら、「父親」と「母親」が対等な立場で、どちらが休むべきか考えるべきでしょう?

休んだ結果、仕事場に迷惑をかけてしまった場合、「夫婦」でその気持ちを共有するべきでしょう?

子育てと共働きが上手く行かなくなった場合、「父親」と「母親」が対等な立場で、どちらが辞めるか考えるべきでしょう?

 

旦那の方が、大変な仕事をしているから、給料が高いから、仕方がないって、そう言うでしょうか。

 

でも、上の「なぜ、女性社員は・・・」の記事でも書いたことですけれど、現に男女の仕事内容に格差があるとすれば、それは「育児は母親の役割」として「病児保育問題」のような子育てまつわる負荷を全部女性に背負わせたからという要因も大きいのではないでしょうか?

 

負荷のない有利な立場で、「俺の方が重要な仕事だから」「俺の方が給料高いから」と言うのは何か違うのではないでしょうか?

それはタダの既得権益では?

 

だからこそ、子育て、特に「病児保育」に関しては、父親の参加が必要だと私は考えます。

父親がよりもっと積極的に参加してこそ、「病児保育問題」の実感を抱け、周知が進みます。

ワーママの皆さんに対する理解も得られやすくなることでしょう。

そうやって、「お互い様」になれば、「突発的な欠勤憎し」の気持ちも薄くなりやすいのではないでしょうか。

 

たとえば、お子さんがいる男性社員の方、いっぱいいらっしゃいますよね?

 

考えてみてください、お子さんがいる女性社員と何が違います?

 

別に違わないのですよ。

 

ワーキングマザーはワーキングファザーと何も違いません。

そもそも、ワーキングマザーを特別な存在とする必要が無いのです。

同じように育児をして、同じように仕事をする仲間なのですよ。

 

だから、「ワーク」と「ファザー」を使い分けるのではなく、「ワーキングファザー」としてちゃんと「仕事」と「子育て」の両立に参加するべきなんですよ。

「ワーキングマザー」と一緒に仲良く。

 

 

③「子どもがかわいそう」の空気の解消

さて、うまく「病児保育」に預けることができて、仕事を休まずに来れたとして、じゃあ万事OKというわけにはいきません。

それはそれで、こういう言葉を受けることがあるのです。

 

「子どもが熱を出してしんどい時に子どもをほって仕事に来るなんて。しんどい時には母親についていて欲しいもんやで・・・。ほんま、子どもがかわいそう」

 

上司など年配の方から説教混じりに頂くこのセリフ。

この言葉が、どれだけワーママさんを傷つけるか、想像できるでしょうか。

 

確かに、おっしゃってることは、全く正論なのです。

しんどい時なればこそ、子どもは親についていて欲しいでしょう。

それはほんとだと思います。

 

でも、それは当のワーママさんも、言われなくてももちろん分かってるんですよ。

 

「子どもについてあげたい」そう思いながらも、「職場に迷惑をかけたくない」「仕事をやりとげたい」という気持ちの狭間で苦渋の決断で、出勤してきてるのです。

朝からぐったりした子どもを抱えて、病児保育に出す手続きだって大変でしょう、小児科に寄って来ていることも多いでしょう。

そんなバタバタをくぐり抜けてようやく出てこれたと思った矢先に「子どもがかわいそう」だなんて。

 

どんだけ、鬼なんです?

 

休んだら「迷惑」と言われ、出てきたら「人でなし」と言われる。

ひどい話すぎやしませんか?

 

そりゃ、熱を出した子どもを家に一人でほっぽり出してきたというなら、「人でなし」呼ばわりも分からなくもありません。

でも、適切な対処をして適切な施設、適切なプロに預けて来たなら、それは十分に「親としてがんばってる」と思いませんか?

その上で、仕事の責任も果たそうとしてる、すごく立派なことではないでしょうか?

 

「子育て」と「仕事」という難しいジレンマの中でも、どうにか最善の道を模索しようともがいている――そんな姿には私はむしろ「人間らしさ」を感じます。

 

そんな人に簡単に「子どもがかわいそう」と言うだなんて、よっぽどそっちの方が「人でなし」ではないですか?

 

実は、実際にこの「子どもがかわいそう」・「病児は親が見るべき」という空気は根強いらしく、①に挙げたような「病児保育」の整備が進まないのも、この空気に一因があるとも言われているようです。

 

「病児保育」の整備を妨げ、ワーママ達を苦しめる、そんな「子どもがかわいそう」という空気は、もう少し見直されてもいいのだと思います。

 

 

「子どもがかわいそう」

 

そう、かわいそうです。

でも、だからこそ、その「子」を、そしてその「両親」も、「社会」で支えてあげないといけないのではないでしょうか?

 

 

 

  ◆ ◆ ◆

 

 

今回のお話はだいたい以上でございます。

 

こうしてまとめてみて思うのですけれど、子どもに限らず、大人だってほんとうは時々病気になったりするじゃないですか。

当たり前ですけど、人って、病気になるものなのですよ。
でも、それなのにけっこう私たちは無理をしてしまうことがあります。

 

病気になっても休むことすらまともにできない日本企業 - 脱社畜ブログ病気になっても休むことすらまともにできない日本企業 - 脱社畜ブログ

 

私たちはもうちょっとこの自然な現象に向き合うべきなんじゃないでしょうか。

大人が病気をして、子どもが病気をしても、自然に回るように、最初からもう少し「余裕」を持たないといけないのではないでしょうか。

 

それを妨げてるものは社会のシステムなのか、空気なのか、それは色々複雑なのでしょうけれど、でも、余裕という潤滑油がなくなって何かがギチギチときしんでいる、それだけは何となく感じます。

 

 

「少子化をなくそう」「女性をもっと社会で活用しよう」

 

そんな声は大きく叫ばれていますけれど、女性は魔法使いでも超能力者でも無いのですから、アレもしろコレもしろとただ言われても、無理な話です。

 

そういう政策を進めたいなら、どうしたって、誰かが支えてあげないといけないのです。

 

それが進まないのを「女性の怠慢だ」などと言うのは、支える方にも責任があるのですから、それこそ怠慢なのですよ。

 

それが嫌なら、私たちは昔ながらの「夫は会社」「妻は家内」という時代に戻る他ありません。

 

でも、進むって決めたんでしょう?

 

決めたんなら、ちゃんとやるしかないじゃないですか?

 

 

 

 

id:Rootportさんのタイムリーなtweetがあったので最後に貼らせていただいて終わります。

 

参考サイト

病児保育のすすめ

 

認定病児保育スペシャリストとは?|病児保育の資格「認定病児保育スペシャリスト」の(財)日本病児保育協会

 

子供の急な発熱!仕事が休めない!どうしよう?に対応してくれる病児シッターありマス。 | MAMA RE:LOVE

 

子どもが病気!保育園どうする? [保育園・保育所] All About

 

子供が急病、でも仕事は休めない…どこに預ける? :日本経済新聞

 

病児保育・病後児保育の認定NPO法人フローレンス

 

 

 

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⇧これは待機児童の方のテーマでした。

 

 

 

P.S.

私自身が独身街道爆走中で当事者ではないので、現状の認識や知識に勘違いがあるかもしれません、あしからず(^_^;)