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雪見、月見、花見。

ぼーっと考えたことを書いています。

自由の国に生まれて

社会

 

「さあ、どこでも好きな国を選んでいいぞ」

 

神様が私たちを促します。

そう、ここは天国。

長かった天国の生活ももうすぐおしまい。

私たちはもうすぐここを去ることになっています。

再び現世に生まれ変わる順番がやってきたのです。

 

私たちは悩んでいます。

生まれる国選びは一大事です。

せっかく生まれ変わるのですから、より良いところに生まれたいのは皆同じです。

 

「ねえ、神様。これはどんな国?」

「そうじゃな、ここは一人の独裁者が彼の判断でルールを決めている国じゃ。まあ、戦乱が絶えず、常に貧困に苦しんでいる国じゃな」

「え~、そんなのやだなー・・・、じゃあこっちはどうかな?」

「こっちは、国民が厳密に管理されていて、決まった仕事を決まった時間働く決まりになっておる。逆らったものは秘密警察に厳罰に処される。まあ几帳面な国じゃな。」

「げぇ~、几帳面だか何だか知らないけど、そんなロボットみたいな生活いやだよ・・・。もっとマシなのはないの?」

「わがままじゃのぅ。それならこれはどうじゃ・・・」

 

この調子で神様は色々と国を見せてくれますが、なかなか気に入るものが見つかりません。

さすがに、私もそろそろ国選びに疲れてげんなりしてきました。

そんな時、隅っこに一つの国を見つけます。

 

「・・・あれ、この国は見せてもらったっけ?」

「ああ、忘れておった。その国は自由と平和をうたった国で・・・」

「自由!!そうそう、私そういうのが良かったんだ~♪ありがと、神様、私ここにするねっ!」

「おおそうか、じゃあ行って来なさい。ゆっくりしてくるんじゃぞ・・・って、やれやれもういないのか」

 

 

こうして、私は自由の国に生まれました。

「さあ、自由に私らしく生きるぞ~」

意気揚々と乗り込んだ自由の国、そこに待っていたのは・・・。

 

「ちゃんと席に座りなさい!あなただけよ、座ってないのは。みんなちゃんとやってるでしょ?」

「しっかり勉強なさいね。良い学校に入っておかないと後が大変なのよ。自分のためよ。だから、ちゃんと頑張りなさい」

「なにー、あいつ、感じ悪ー。KYだねー、キャハハ」

「何あんた、あの子の味方すんの?・・・へぇー、そんなことしたらどうなるか分かってる?」

「隣の○○ちゃんは、△△大学受かったんですって。それなのにあなたときたら・・・」

「まだ就活始めてないの?もうみんな始めてるよ?」

「学生生活であなたが打ち込んだものはなんですか?」

「おい、この作業やっといてくれ。早くしろよ。あぁ、何だその態度?お前の代わりなんていくらでもいるんだよ」

「有給?こんのクソ忙しい時に何言ってんだ?」

「ちょっと、そろそろ結婚しないの?孫の顔が見たいわ」

・・・・・

 

 

どうもおかしい。

この国のどこが自由なんだろう。

話が違うじゃない。

こんなのもうやってられない!

 

私は神様に文句を言いに行くことにしました。

 

 

「おかえり、早かったのぅ」

「ちょっと神様、あれのどこが自由の国なの!?自分のやりたいようにしようとしたら、全部白い目で見られるじゃない!」

「いやいや、落ち着きなさい。何やら怒っているようじゃが、あれは紛れも無く自由の国じゃよ」

「みんなこうしてる、普通はこうする、そんなのばっかり。みんなと同じになることを、"空気を読め"だの"和を乱すな"だの、と言いながら迫ってくる。これのどこが自由なのよ!」

「・・・ふーむ、でもそれはあくまでその国のみんながそれぞれの自由意志で築き上げた"空気"じゃないかぇ?みんながそういう形を望んだから、そうなっただけじゃ。耐え忍んで、努力して、私利私欲に動かされず社会のために尽くす者を奨励し、"空気を読まない者""和を乱す者"には間接的に制裁を下す社会を皆が選んだだけじゃ。ただ、それも絶対のルールじゃない。実際、お前さんも皆の言う決まりきったレールを外れて独自の生き方を選ぶこともできたはずじゃ。でも、そうしなかったんじゃろ?お前さんも自分の意志で"不自由"を選んだんじゃないのかぇ?」

「だって、そうしなきゃ・・・どう生きていいか分かんなかったんだもの。みんなと同じ事をしないと、明日生きていけるのかさえ分からないような気がして・・・」

「そうじゃ。お前の生まれる前、あの国を育ててきた人間たちも、そんな"自由"のもたらす"不安"に耐えられなかったんじゃよ。そうして、不自由でも"安心""安定""安全"を求める社会を築いたんじゃ。それもなかなか巧妙でな。あくまでみんなが自分の自由意志で"不自由"を選ばせるような"空気"を作ったんじゃ。見事なもんじゃ。自由の国なのにあえてみんなで"不自由"を選ぶ、ほんと皮肉な話じゃがな。」

「でも・・・、私は行ったから分かるけど、ほんとはもうみんなこんなの嫌がってる・・・。ねぇ、神様の力で何とかならないの?自由の国なのに"不自由"だなんておかしいでしょ!?」

「わしとしても、彼らが自分の意志で作った社会じゃから、善いとも悪いとも言えんよ。ただ、ほんとうにみんなが自由を望んでいるというのなら、彼ら自身で社会を変えるのが筋じゃないかぇ?だって、自由の国なんじゃから。ほんとうにほんとうにみんなが望みさえすれば、社会も変わるはずじゃよ」

「そんな正論言われても・・・」

「神様というものは正論を言うものと相場が決まっておる」

「あぁ・・・もうっ、ほんと、神様には勝てないわ・・・」

「ほっほっほ、わしに勝とうなぞ、137億年は早いわっ!・・・ともかく、あの自由の国の民たちがこれからどう動くのか、一緒に高みの見物としようぞ」

「うん、みんなならやってくれるよね・・・。私は信じてる・・・」

 

 

 

ここは天国。

今日もまた現世に生まれ変わる者たちが、生まれる国を選んでいます。

彼らを受け入れる国はどこなのでしょう。

彼らを待ち受ける人生はどんなものでしょう。

それぞれの国は、彼らを自信を持って受け入れられるでしょうか。

産まれてみて、彼らが失望することはないでしょうか。

人生を終えた時、彼らが胸を張って誇れる国になっているでしょうか。

 

それは全部、みんなの生き方にかかっているのです。

 

 

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